―　春日館２５周年記念誌をつくるにあたって渡辺先輩の相撲との出会いから現在までと、春日館の館長としてのお考えをなどを聞かせて頂ければと思います。お願いします。それでは、まずは渡辺先輩は、いつごろから相撲を始められたんですか？

渡辺　　中学校の時から身体は大きかったから相撲部には、在籍しとったんよ。でも、あんまり本格的にと言うか、積極的にはやりよらんかった。

― 野村中学校ですか？

渡辺　　そう、野村中学校よ。中学、高校といちおう相撲は続けて野村高校を卒業する時に兵頭茂さんとの出会いがあったんよ。まぁ、それまでにも相撲の大会とかで知ってはいたんやが、わしは高校卒業して調理師になりたかったんよ。「調理師の道に進みたい」と言いよったら、兵頭茂さんがわしの所に来て「お前は調理師になったらいけん。体をこわすぞ。相撲をやれ！」と言われて高校卒業してから本格的に相撲を始めたんよ。昭和４８年に春日生コンに入社して、春日館が出来る前に道場があった場所の二階に稲田さんと相部屋で下宿して、仕事が終わってから稽古しよったんよ。

― 渡辺先輩自身は、高校生の時に県大会とかには、出てなかったんですか？

渡辺　　本格的にやり始めたのは、社会人になってからやけんの～。南予の予選では勝っても県大会で上位に残るような結果は出してない。

― 春日館の一期生となる松島先輩とかは、何年後輩になるんですか？

渡辺　　松島は５つ下。

― 兵頭茂先生はその頃は相撲の指導に来られてましたか？

渡辺　　茂さんもまわしを巻いて指導しよった。その頃には相撲道場の奥には闘牛ウシも飼いよった。その頃に茂さんは、６０才ぐらいやったが、土俵の上で国体に出る宇和島の桐島さんとかバリバリの青年の選手相手に稽古しておもちゃにしよったよ。

― 渡辺先輩も胸を借りたりされてました？

渡辺　　うん。その頃に忘れもせんが、土俵の真ん中に茂さんが寝て「渡辺ちょっと来い！」と言うから行ったら「腹の上に乗れ！乗ってジャンプしろ！」と言うから「大丈夫ですか？」と聞いたら「大丈夫や！乗ってジャンプせい」と言われてらピョンピョンと茂さんの腹の上でジャンプしたことがあった（笑）。６０才のおじいちゃんで（笑）。わしがその頃１００キロ超えとったけんの～。これは、凄いなぁ～と思ったわい。

― 指導は、どういう指導をされてました？

渡辺　　和気のヨネちゃん（野村高校ＯＢ）にお前は脇が甘いと言うて、納屋からワラを持ってきて、「稽古中それを落としたらいかんぞ」と言うて稽古をさせるような指導もしよったわい。

― 昭和５１年に春日館を開館する頃は、渡辺先輩は下宿されてたんですか？

渡辺　　下宿しとったよ。高校卒業してからは、ずうっ～と春日で下宿しとったから、松廣さんは何年くらいから来よったんやろ？

― 昭和５４年の夏ぐらいからですね。渡辺を強くすることも兵頭館長に言われてた任務だったと言ってましたよ。高校生の稽古台みたいになっとったからと。

渡辺　　松廣さんに来てもらいだした。おかげで強くなりだして、まぁ～小さいタイトルやけど、四国の青年で優勝する事もできたんよ。

― 一時期高知の選手も逃げるぐらい強かったと言ってましたよ。一回高知の籠尾さん（明治大学相撲部ＯＢで全国社会人大会などの優勝経験を持つ）にも勝ってるんですよね。

渡辺　　あれが最初で最後よ、フフフフフ。

― 籠尾さんが現役引退する前ぐらいですか？

渡辺　　いや、まだ元気な頃やった。間違いで一回勝った。茂さんが「２０才過ぎたぐらいにナンボ稽古しても疲れん時期が来る」と言われてたけど、あの頃がそういう時期やったんやないろうかと思わい？

― そして、春日生コンに勤めていたのを辞められて焼肉店（焼き肉・幸ちゃん）を開かれますが、あれは兵頭館長に言われてですか？

渡辺　　春日生コンに入るときに、調理師になりたいと言いよったのを先代（春日館創始者・兵頭茂先生）が相撲をさせるために引っ張ったのを洋和館長が知っとったから「土地があるんやが焼肉店をやってみるか？」と言われたんよ。

― そしたら、もともとの夢をそこでかなえられたと言うわけですね？

渡辺　　そう、洋和館長のお陰でやりたかった仕事につけたんよ。

― 春日館と焼き肉店が隣り合わせになってますが、これは最初から意図的にそうしたんですか？

渡辺　　いや、そうじゃない。春日館の方が先に出来とったんやけん。たまたま土地が横にあっただけよ。

― 兵頭館長に相撲の指導をしてくれというようなことは言われてたんですか？

渡辺　　「高校生を強くしてくれ」と言われとったけど技術的なことをもっと真剣に茂さんに習うとったら良かったと思わい。高校時代はあんまり真面目に稽古をしてなかったから、相撲の現役を引いてから余計にそう思い出した。高校の時からもっと一生懸命稽古しとったら良かったと思う時があらい。

― 渡辺先輩は、これから春日館でどういう子供を育てていきたいですか？

渡辺　　まぁ、相撲が強くなるのは当たり前やけど、相撲を通じての人間づくりと言うか、精神的にも成長していって欲しいと思うとる。地元の野村に残るものは、地域に貢献できるような人間になってくれたらと思うとるんよ。　　

〈平成１３年１月２７日、春日館にて収録〉

目次に戻る